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気候変動対策に数十億ドルを投じる画期的な法案が米上院で可決されました。地球温暖化抑制の取り組みのなかで、米国が信頼できる主要国に返り咲いたことに関し、BNPパリバ・アセットマネジメントの環境戦略グループ、Edward LeesとUlrik Fugmanが見解をまとめています。

総額4,300億ドルに上るインフレ抑制法(IRA:Inflation Reduction Act)には、気候変動への対応に加え、薬価引き下げや法人税の引き上げなどが盛り込まれています。成立には民主党が主導権を握る下院での採決が必要となりますが、法案は今週中にもジョー・バイデン大統領の署名を経て成立すると見られ、それに先立つ下院での可決は形式的なものになる見込みです(8月9日執筆時点)。

先週、一連の法案に対し上院が妥協したことは、市場にとって予想外の出来事でした。この法案は「米国においてこれまで最も野心的な気候変動対策」(New York Times)と認識されており、今後10年間で風力、太陽光、地熱、その他のクリーンエネルギー産業を強化するための税制優遇措置が含まれています。

同法案は、下院民主党が2021年の大半を費やした数兆ドル規模の大型法案である「ビルド・バック・ベター計画」と区別するために、「2022年インフレ抑制法」と呼ばれています。この名称は、クリーンエネルギー技術が中長期的にもたらすと期待されるデフレ効果を強調するものとなっています。[1]

当社はこれまで、ビルド・バック・ベター計画が頓挫した後、この夏の間に米国の大型気候変動法案が採決されるだろうと市場予想とは反対の見方をしていました。

その根拠となっていたのは、クリーンエネルギー投資は最終的にデフレ効果をもたらすという当社の見解です。また、クリーンエネルギー投資は、ウクライナ戦争で話題の中心となっているエネルギー安全保障にも貢献します。加えて、米国の電力インフラは悲惨な状況にあり[2]、安価で環境に優しく、信頼性の高い電力が必要だと当社は考えています。

IRAによる効果:クリーンエネルギー

いくつかの例を挙げます:

  • 2024年にユーティリティ・スケール(発電所規模)の太陽光発電導入が90%増加する
  • 陸上風力発電の導入が2030年まで毎年60%増加する
  • 主要なグリーン水素メーカーが、クリーン水素の製造により収益を得られる段階に達する
  • エレクトロクロミックガラス(スマートガラス)が従来の窓ガラスの価格と同水準になる

IRAによる効果:気候変動

この法案が大きなブレークスルーとなる理由は、以下の3つです:

  • 3,690億ドルのインセンティブにより米国のクリーンエネルギー投資が大きく加速し、その結果、米国の長期的な予想電力価格が劇的に下落する
  • 国際的な気候変動対策の交渉において米国が再び優位に立つ:これにより、他国からの同調政策がさらに進む可能性がある
  • 米国が2030年までに、温室効果ガス排出量を2005年比で40%削減することが可能になる

IRAによる効果:クリーンテクノロジー

この法案は、2030年までの米国の再生可能エネルギー産業への投資を再構築することになると見られています。

具体的には、以下のような取り組みが法案に含まれます:

  • 消費者が支払うエネルギーコストの低減
  • エネルギー安全保障の強化、国内製造業の振興
  • 脱炭素化の推進
  • 環境的公正(environmental justice)の強化
  • 農家や農村への支援

また、以下の重要な政策が含まれます:

  • 投資税控除(ITC:Investment Tax Credits)と製品税控除(PTC:Product Tax Credits)の長期にわたる延長措置。これにより、当該分野への投資を検討している再生可能エネルギー企業が将来を見通せるようになり、投資が大幅に拡大する可能性がある。部品の国内調達基準を満たしたプロジェクトには10%のITCクレジット、低所得コミュニティに設置されたシステムにはさらに10%のITCクレジットが付与される可能性がある。
  • 風力、原子力、バイオマス、水力、そして2006年以来初めてとなる太陽光に対するPTCの再導入。これは既存の米国メーカーにとって有益で、その結果、今後数年間にわたり米国の生産能力に膨大な投資が行われると予想される。
  • 太陽光発電に関しては、税控除の期間が延長されることにより、消費者による設置や設置業者の成長に対し、将来的な見通しがより確実なものとなる。プリンストン大学の研究によると、インフレ抑制法によって太陽光発電の導入が2020年の5倍になると予想される。
  • 風力発電に関しては、今後8年間で年間の風力発電設備が60%以上増加すると当社は見ている。
  • 今回初めて、低炭素水素に対する税控除が設けられた。米国で市場をけん引するグリーン水素メーカーにとって、この法案は画期的なものになると当社は考えている。
  • エネルギー貯蔵が法案に盛り込まれたことで、住宅用ストレージの導入が加速し、住宅用太陽光発電向け融資や太陽光発電企業の大きな成長につながると思われる。この流れは蓄電メーカーや設置業者にとって大きな追い風になると当社は見ている。

IRAによる効果:電気自動車(EV)

詳細の一部は以下の通りです:

  • 中古EVは4,000ドル、新車EVは7,500ドルの税控除を受けることができる。北米で組み立てられたEVであることが条件。2023年以降は、中国製電池を搭載した車両は対象外となる。
  • 重要鉱物(クリティカル・ミネラル)は、米国または米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国で産出されたものでなければならない。
  • 55,000ドルまでの乗用車、および80,000ドルまでのトラック、バン、SUVにのみ適用される。
  • さらに、これまで設定されていたメーカーごとの20万台というクレジット上限が撤廃され、2032年まで利用できるようになった。

このことは、特に原材料の面で重要な意味を持ち、米国に拠点を置く重要鉱物の精製業者や電気自動車メーカーの競争力が大きく強まる可能性があります。

また、ガソリン価格の上昇で内燃エンジンのランニングコストが高くなっている現状において、EVの価格引き下げによりEV需要が押し上げられることも予想されます。

<ご留意事項>
[1] グリーンフレーション (Greenflation) については、‘Greenflation’ – Navigating the climate policy, oil price and inflation nexusの記事もご参照ください。
[2] ロイター”Creaky U.S. power grid threatens progress on renewables, EVs”より。

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